読めばわかるコラム:Vol.11 部下のモチベーション低下…強い営業チームには名コーチがいる
トップへ戻るイソップ物語のレンガ職人の話はご存じだろうか。
詳細は割愛するが、同じレンガを積む仕事をしている人でも、「くる日もくる日もレンガを積むことが仕事だ…」と思う人もいれば、「街の人々の心をいやす大聖堂を造っているんだ」と自らの仕事を意味づけて働く人もいるという話だ。
言わずもがな、後者のような人は、高いモチベーションを維持しながら仕事ができる人だ。 ただし、自律的に仕事の意義や意味を見出し続けることができる人は、そんなに多くはいない。私もそうだが、誰かの助けがあって、モチベーションが明確になったという経験を持っている人も少なくないはずだ。今回は、そのポイントについて考えていこう。
モチベーションが下がった部下にかけるべき言葉とは
たとえば、仕事へのモチベーションが下がり、元気がなくなってきたメンバーがいたらどのように手を差し伸べたらいいのだろうか?
考えられる要因の1つとして、今の仕事が“やらされ感”になっていることだ。
やらねばならない事だと分かっているけど、「どうもやりたくないんだよなぁ」という状態だ。
ここで、1つの例をあげよう。先輩から大手企業を引き継いだA君の場合だ。
●前任の先輩と比べて、お客様から全幅の信頼を得ているわけではない。大型商談が獲得できる余地は十分あるのに、ついつい足が遠のいてしまう。
●そんな時には、顧客の事や担当者の仕事内容をよく調べ、少しでも役立ちそうな情報を届けたり、何かのついでに顔を出しコミュニケーション頻度を高めるなど、信頼獲得に向けた地道な活動が必要だ。と、あなたは何度もメンバーにアドバイスするが、それをやっている気配は一向に感じない。
「そんなに難しい事を言っているわけではないだろう! お前、やる気あるのか?」
と説教したくなる。実はその通りで、メンバーからすると、言われていることは正論でやるべきだと思うのだが、“どうも、やる気が起きない”のだ。
そんな時は、アプローチ方法を変えて、
「A君、ここまでの大手企業を担当するのは初めてだろう。どんな営業がしてみたい?」
「この機会を活かして、自分は営業としてどう成長したい?」
と、本人のWill(意思・意向)を引き出してみることをお勧めしたい。
すると、
A君:「これまでは、商品力や会社のブランドでお付き合いしてもらっていたように思うんです。でもこれからは、A君だから取引したいと言われるようになりたいですね。」と言ったことを口にするかもしれない。
あなた:「だったら、ちょうどいい機会だよ。前任の先輩の影が薄れるくらい自分の存在感を出してみたらどうだ!」と、やるべきこと、つまりMustを重ね合わせ、意味づけてあげることが大切だ。
◎POINT◎
Willを引き出し Mustを重ねて仕事を意味づけよ!
さらに能力(Can)を認めて背中を押す
さらに続く。
A君:「でも、できますかね、先輩は優秀だったし…」
あなた:「A君、今も担当しているX社は、役員さんとずっとやり取りしているよね。大手企業ではないけど、経営課題についても相談される関係を、よく築いていると思うよ。」
「それは、A君がX社のことをよく理解してくれていると役員さんが感じているからだよ。企業の規模は違うけど、A君ならできると思うよ。」
これは、メンバーの強みとなる能力(Can)を、具定例をあげて承認し背中を押すことだ。
また、次のようなアドバイスも有効だ。
あなた:「A君はよく事例も勉強して、いろんなアイデアを投げ掛ける強みを持っているよね。ただ、そのアイデアがお客様にとって実践的な内容だという根拠を示すロジックが弱いことがある。そのためには、もっといろんな人に会い、緻密にお客様のことを調べることが大事だ」
これはつまり、これから更にできるようになって欲しい事(Can)を伝えることだ。
◎POINT◎
さらにCanを重ねて、その可能性を勇気づけよう!
このように、メンバーの“Will”を引き出し、やるべき“Must”に接続し、頑張ればできるぞ!と“Can”の輪の広がりを示唆することで、やらされ感はなくなり、自分事として前向きに取り組むようになる。
●Will-Must-Canの輪を重ね合わせる●
これはいわゆる、コーチング手法の1つだ。名選手には名コーチが必ずいる。
ぜひ、これを機会に名コーチを目指して欲しい。
次回は、メンバー育成に必要な能力の見極め方についてお伝えしたい。