読めばわかるコラム:[Biz小説]第6話:「わかる」と「できる」の深い溝

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ここはプロプロ株式会社。新入社員のB作は、K社との商談で学んだばかりの「上下の質問」を実践しようとしたものの、手応えを得られず落ち込んでいた。一方、同期のA子は「無知を恐れない好奇心」で顧客の懐に飛び込み、確かな一歩を刻んでいた(第5話:スキル習得の壁)。上司であるC一郎は、壁にぶち当たり落ち込むB作を育てるためには、まずは営業部のエース・Dキルへの後輩育成指導が必要だと感じていた。

Chapter 1:「Will*Skillマップ」で見極める現状

Chapter 1:「Will*Skillマップ」で見極める現状

C一郎はDキルを小会議室に呼び出した。
「Dキル君、さっきB作君のことを“センスがない”の一言で切り捨てたらダメだといったけど、もう一度彼の商談報告を聞いて、どう感じた?」
Dキルは少し考え込み、「知識としては『上下の質問』を理解して、使おうとはしているみたいですが……なんだか空回りしているというか、相手との距離が縮まっていない感じがしますね」

C一郎は頷き、手元の資料から一枚の図をデスクに広げた。
「これを見てくれ。人材育成の指標になる『Will*Skillマップ』だ」

「Dキル君、このマップの上で、今のB作君はどこにいると思う?」
Dキルがマップを覗き込んだまま答えられずにいると、C一郎はこう続けた。
「B作君は今、BゾーンとCゾーンの間にいるんだよ」と言ってペンで一点を指し示した。

「BとCの間、ですか?」
「そうだ。今の彼の状態を正確に整理してみよう。まずWill(意欲・自信)の現状だ。彼はやることの意義や必要性は理解してやろうとしている。しかし、トンチンカンな質問をしてしまうのではないか、相手が話していることを理解できていないことが露呈してしまうのではないかという『恐れ』が生じて、自信を持ってやりとりができていないんだ」
Dキルは、以前からB作が手元のメモばかりを見て、相手の顔を見ようとしない様子を思い出した。
「そしてSkill(知識・技能)の現状。知識としては『上下の質問』を理解しているが、先ほど言った自信のなさが足枷となって、上手く発揮できていない状況にあるんだよ。つまり、理論はわかっているが、心理的なブレーキが実践を妨げている状態だね」

B作のWillとSkillの現状

課題:お客様の組織ニーズや個人ニーズを引き出す

Chapter 2:必要なのはティーチングとコーチングの使い分け

「なるほど……。知識が足りないわけではなく、自信のなさがスキルを押しつぶしてしまっている、ということですね」 Dキルは納得したように頷いた。「じゃあ、彼にはどう接すればいいんでしょうか?」

C一郎は椅子の背もたれに深く体を預けた。 「ここで重要になるのが、ティーチングとコーチングの使い分けだ」

ティーチングは、相手が知らない『答え』や『やり方』を教えること。対してコーチングは、相手の中にある『気づき』を引き出し、行動を促すことだ。今のB作君に『もっとこう質問しろ』と新しいテクニックを教える(ティーチング)のは、逆効果かもしれないね」

「『覚えなければいけないこと』が増えるので、余計に混乱して自信を失うかもしれませんね」

「その通り。今の彼に必要なのは、失敗への『恐れ』を解きほぐすコーチング的な関わりだ。まずは、『商談の中で何が怖かったのか』を彼自身に吐き出させ、事実と感情を切り分けさせる。その上で、小さな成功体験を積ませて自信を回復させる必要がある。一方で、商談の準備の仕方などの具体的なプロセスについては、まだ型ができていないから、そこはしっかりティーチングで導いてやる必要があるね」

C一郎の言葉を聞きながら、Dキルは自らの指導を振り返っていた。自分は「やり方」ばかりを教えて、B作の「心の内側」を置き去りにしていなかっただろうか。

「Dキル君、明日もう一度、B作君とロープレをしてみてくれないか。今度は『上手い質問をさせる』ことではなく、彼が『何に詰まっているのか』を一緒に見つけるつもりでね」

「わかりました、やってみます」

Dキルの顔には先ほどまでの困惑ではなく、明確な指導の指針が見えていた。B作の「わかる」が「できる」に変わるまで、プロプロ社の育成は続いていく。

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