読めばわかるコラム:[Biz小説]第3話:仮説とフレームワークで情報把握力を鍛える

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ここはプロプロ株式会社。新入社員として入社したばかりのB作は同期のA子とともに“売れる営業”を目指して頑張る日々だ。前回は同僚・A子とタッグを組んだ案件で「経験学習サイクル」の〈内省〉にあたる「振り返り」の大切さを学んだ。さて、今回はさらなる学びで「経験学習サイクル」を回せるようになるのか!?

●経験学習サイクルについては「第2話:振り返りを学びに変える人」をご覧ください

Chapter1:商談後のミーティング

B作とA子で営業案件を任されるようになってはや2カ月。上司のC一郎は、営業から戻った二人と必ずミーティングを行うようにしている。まずは、C一郎がふたりに今回の商談についての振り返りを促す。

「今回の商談、提案は一生懸命だったが響かなかったな。なぜだと思う?」
B作が厳しい商談の場を思い出しながら覇気なく答える。
「僕は“何かお困りごとがありますか?”と聞いたんですが、“まぁ色々と”で終わってしまいまい、話が続けられなかったところが気になっています」
C一郎はその姿に苦笑しながら答える。
「単なるオープン質問はダメだ。大事なのは“仮説”を立てることだ。」
B作とA子は思わず前のめりになって声が出てしまう。
「仮説って……!?」
「いろいろと想像するってことですか?」

「まあ、そうなんだけど……」
思わずC一郎は頭をかかえてしまった。

Chapter2:「推測」と「仮説」の違いとは!?

そこへまたまた颯爽と現れたDキル(デキル)先輩。ホワイトボードになにやら書き始めた。
仮説というのは“事実+推測”だ。事実に基づかない推測は、ただの妄想。
例えば“この会社はバックオフィス作業の効率化に困ってるに違いない”は妄想だ。
でも“ニュースでバックオフィス人員削減方針が発表されていた→バックオフィスの省力化、自動化に興味があるかも”なら筋の通った仮説になる。」

「なるほど……探偵の推理みたいですね!」とA子。
「推理はいいが、こちらの商品が売るためにニーズを根拠もなく質問するのは、誘導質問だぞ」とC一郎は苦笑しながらやんわり釘を差した。

「誘導質問は “また営業トークか”と相手は身構えるだけで、会話は深まらないんだ」とDキル。
「じゃあどうすればいいんですか?」。新人ふたりは思わず身を乗り出して聞いていた。

「まずは事実に基づいた仮説をぶつけて、真の組織ニーズを引き出す。そこから“そのニーズを満たすために何が困っているのか”を語ってもらえたら、それ自体が商談化の入り口になるんだ」。C一郎が今度は真面目な表情で答えた。

Chapter4:個人ニーズに光を当てる

A子はメモを見ながら前回の商談についてできる限りの内容を思い出そうとしていた。
「そういえば前回は、“個人的には新しいやり方を試したい”って言葉をスルーしてしまいました」。

「うん、いい振り返りだね。『個人的には…』という言葉は“個人ニーズ”のサイン。組織ニーズを満たすことが商談成立の条件だが、個人ニーズを理解して満たすことで“この人と一緒にやりたい”と思ってもらえる。その人の推進力も強まるし、こちらにも協力的になってくれるんだ」とC一郎。
「理屈で組織を動かし、心で人を味方にするということですね。」
「A子、うまいこと言うね!」とDキルが笑顔になりつつ、さらに加える。
「ここで大切なのは“情報把握力”なんだ。つまり、仮説にもとづいた効果的な質問をすることで、顧客の状況を整理しながら的確に把握することが重要というわけ」

そう言いながらホワイトボードにさらに書き加えていく。顧客の「組織ニーズ」「個人ニーズ」についてまとめた図は、整理して考えるために役に立ちそうだ、とB作とA子は食い入るように見つめている。

Chapter5:仮説を立てるためのフレームワークの重要性

Dキルはさらに新人ふたりにPC画面を見せながら説明を続ける。
「僕が使っている組織ニーズと個人ニーズを整理するためのシートを共有しておくよ。顧客ごとにこのシートを作っておけば、それぞれの項目を整理できて情報把握をするのに役立つはずだ。君たちも使ってみるといいよ」。

B作はこのやり取りをメモしながらアドバイスを自分に言い聞かせるように反復する。
「まずは組織ニーズの仮説を立てて、真の課題を引き出す。困りごとを聞き出せたら、それが商談の入り口になるということですね」
「さらに個人ニーズを満たして、“理屈+心”で動機づける! 勝ちパターン、見えました!」と意気揚々とこぶしを突き上げるA子。
「いい流れだ。これが経験学習理論でいう“内省⇒概念化(セオリー化)”だ。あとは実践だな。実際の商談で学習サイクルを回してこい!」

C一郎は新人ふたりの失敗から学ぶ姿を頼もしく思いながら、ふたりをフォローするDキルの成長もうれしく、満足そうに3人の様子を見つめていた。

読めばわかるコラム:[Biz小説]第2話:振り返りを学びに変える人

読めばわかるコラム:[Biz小説]第1話:真似る力の差

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