読めばわかるコラム:[Biz小説]第5話:スキル習得の壁
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ここはプロプロ株式会社。新入社員として入社したばかりのB作は同期のA子とともに“売れる営業”を目指して頑張る日々だ。ある日の午後、商談から戻ったB作はデスクに座り込み、大きなため息をついた。前回、上司のC一郎から学んだ≪背景を問う「上の質問」≫と≪具体化する「下の質問」≫を意識し、準備した仮説を携えて臨んだ商談のはずなのに……
↓↓ 前回の学び「上下の質問」についてはこちらから ↓↓
[Biz小説]第4話:雑談力と質問力で仮説を深掘りする
Chapter1:手応えのない「深掘り」
K社との商談の場は、B作が言葉を発するたびに凍りついていた。B作の頭の中は、「上下の質問」を習った通りに繰り出すことで一杯だった。
「御社の中期経営計画にある『生産性向上』ですが、具体的にはどの業務の効率化を指しているのですか?(下の質問)」。 B作は手元のメモに目を落としたまま問いかける。(次は背景を聞かなきゃ……)と心の中でつぶやく。
相手の部長は、不快そうに眉間にしわを寄せ、
「……文字通り工場の生産プロセスの見直しですよ」と短く答える。
(なんなんだ、この若手は。私の顔も見ずに、まるで警察の取り調べじゃないか。表面的な数字や計画のことばかり)。
「生産プロセスですか……」(生産プロセスって、よくわからないなあ。うーん、上の質問に切り替えてみよう、これで背景が引き出せるはずだ)。B作は思い切って次の質問を繰り出す。
「生産プロセスからメスを入れるのはどうしてですか?(上の質問)」。
(なぜって、うちはメーカだからに決まっているだろう。この男、ウチの仕事についてどれくらいわかっているんだろう)—— 部長の心はさらに閉ざされてしまった。
結局、商談は一問一答のまま終了。
B作は「なぜか手応えがない」と、冷や汗を拭いながら会社へ戻った。
Chapter2:A子の「無知を恐れない」好奇心
同じ頃、A子は別の商談先で全く違う空気を生み出していた。
「受付システムの応答がとても親しみやすい対応でびっくりしました!これも御社のAI技術なんですか?すごく温かい雰囲気で素敵だなって思いました!」。
A子の問いかけに、緊張ぎみだった担当者の顔がほころぶ。
「実はこれ、私がマーケティングリーダーの時に起案したコンセプトなんです」
「えっ、そうなんですか! 凄い!」 A子は目を輝かせてさらに質問を続ける。
「実は私、AIの技術についてはあまり詳しくないので教えていただきたいのですが、なぜ、あんなに人間味のある喋り方ができるんですか? 何か特別なこだわりがあるのでしょうか?」。
A子は、自分が知らないことを恥じる様子もなく、素直に深い質問を投げかけていく。 (この人がこのAIに込めた想いをもっと知りたい!)という気持ちがあるからだ。
担当者は思わず身を乗り出して、
「よくぞ聞いてくれました!実は技術的な効率化だけでは差別化はできないので、『使う人の孤独を癒やすこと』を重視したんです。個人的には、技術が進んでも温かさを残したいという想いもあって……」、嬉々として開発の裏話まで話し始めた。
興味をもったことに臆せず深く切り込んでいくA子の姿勢が、組織ニーズだけでなく、個人ニーズ(本音)も自然と引き出していたのである。
Chapter3:上司と先輩の考える「B作の壁」
夕方のオフィス。
散々だったK社との商談について、B作はDキル先輩に報告しなくてはならない。報告を受けたDキルもため息まじりだ。どうアドバイスするべきか。課長のC一郎に相談に向かった。
「課長、B作君はやはり営業には向いていないかもしれないですね。A子みたいにお客様と打ち解ける『センス』がない。教えた質問スキルを使うことに必死で、会話になってないんですよ」。
それを聞いたC一郎は、静かに首を振った。
「Dキル君、センスの一言で切り捨ててはダメだ。B作君だって、教わった『上下の質問』を使いこなそうと努力しているのは事実だろう? 私が考えるに、二人の差は『知らないことへの恐怖心』にあるんじゃないかな。A子さんは自分が知らないことに後ろめたさや恐れがない。だから、素直に懐に入って深く聞けるんだ。」
「一方で、B作君は『知らないことが露呈すること』を恐れているのか」とDキル。
「そうだ。意欲はあるが自信がない状態だ。何も知らないヤツだと思われるのが怖いんだ。わかるだろ?」
「なるほど、僕もそういう時がありましたね」——Dキルも思い当たるところがあるようだ。
「知識としての『上下の質問』のことはわかっていても、相手を理解するまで踏み込んでいく事に腰が引けているんだろう。さあ、Dキル君。そうだと仮定すると、君ならこの状況のB作君をどのように育てる?」
さて、Dキルの導き出す答えは? それによってB作は壁を突破することができるだろうか。
第6話にづづく